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株式会社世古工務店
(三重県鈴鹿市)

野島さん、仁木さん
株式会社世古工務店は、1960年(昭和35年)に大阪府東大阪市で創業し、現在は三重県鈴鹿市を拠点に建築工事や施工管理などを中心に事業を展開している。
従業員数は26名。大阪などのグループ全体を含むと50名弱。建設業界全体で人材の高年齢化が課題となる中、同社では20代の従業員が約3分の1を占め、若手が活躍する職場づくりを進めている。
今回は、代表取締役の仁木雅之さんと、衛生管理者の野島真貴代さんにお話を伺った。
「共環力」の考えのもと、従業員を大切にし、福利厚生制度や研修を充実させ、健康経営・メンタルヘルス対策を推進している
まず、健康経営の取組みを始めた経緯についてお話を伺った。
「従業員を大切にする」という考えから、健康経営の取組みを広げてきました。
「2017年頃から従業員の福利厚生制度の充実に取組み始めました。もともとは、2012年に三重大学大学院地域イノベーション科の産官学連携による100年企業を目指すための活動の学びの場への参加が大きなきっかけでした。その中で、当社には国土交通省の認定工法を生み出した組織力があるので、そこにもっと着目した方がいいと言われました。100年企業を目指すためには、従業員を大切にする会社でなければならない。その考えが、今の取組みにつながっています。」
「2016年に私(仁木さん)が社長に就任した際、それまで温めてきた大切な考え方として、“共環力”を理念に掲げ、福利厚生制度を少しずつ整えてきました。当初は、挑戦した従業員を評価する表彰制度などから始まり、現在では35種類の福利厚生制度があります。これらは健康経営の取組みともつながっていましたので、2017年に三重県による“三重とこわか健康経営カンパニー(ホワイトみえ)”の認定を受け、毎年取得しています。そして、2021年に“健康経営優良法人(中小規模法人)”の認定を受けた後は毎年取得しています。」
「今の健康経営宣言は、2024年に整えました。健康経営だけを単独で進めているというより、働き方改革や人材育成、福利厚生の充実と一体で進めています。従業員が健康で、長く、生き生きと、そしてワクワクしながら働ける会社にしたいと考えています。そういった活動を経て、2025年・2026年と、“健康経営優良法人(ブライト500)”を取得しました。」
ストレスチェックを導入する意義や意味を事前に伝え、従業員が自分ごととして考え、自身の状態を確認しながら、必要に応じて相談できる体制を整えている
次に、ストレスチェックの取り組みについてお話を伺った。
結果を見る不安がありましたが、実際に実施して安心できました 「当社は事業場ごとの従業員数が50人未満のため、実施義務がありませんが、2023年からストレスチェックを実施しています。きっかけは、当社のホームページのリニューアルに合わせて導入したDXの中に、ストレスチェックサービスが含まれていたからです。社会的な流れから、いずれは全社で義務化されるだろうと見込んでもいたので、先に実施してみることにしました。」
「最初、私(仁木さん)にとって、ストレスチェックの実施は怖かったです。当社のような小規模の会社で、高ストレス者が多かったり、会社全体のストレス度が高かったりといった悪い結果が出たらどうしようかといった不安がありました。それでも、会社のストレス状態を見えないままにしておくのではなく、きちんと把握する必要があると考え行いました。実際にやってみると、思ったよりも会社のストレス状態の結果が良く、安心につながりました。私のストレス改善にもつながり、実施して良かったと思いました。」
全従業員に導入の意味や意義を事前に落とし込みました
「当社では、社内で独自に次世代育成プログラムを実施しています。始めた2017年は、顧問社会保険労務士などによる1~2年の人間力向上に関する様々な研修を選抜者に対して行ってきました。最近は、“リソースフルセミナー”と名称を変え、管理職から新入社員まで、全従業員を対象にほぼ毎月行っています。基本は、同じ空間で同じセミナーを受け、意見を交換し合い、会社全体で人間力の向上を図ることを目的にしています。」
「そのセミナーの中で、3ヶ月かけて、会社としてなぜストレスチェックを行うのか、健康経営になぜ取り組むのかを伝え、会社と従業員全員が方向性を合わせられるようにしました。従業員にとっては、面倒に感じることもあると思います。だからこそ、会社が向かっている方向や、取組の意味をしっかり伝え、腹落ちした状態で、ストレスチェックを始めたいと考えていました。」
ストレスチェックによってお互いの理解につながっている 「ストレスチェックは57項目で、従業員はスマートフォンを使って回答します。このセミナーに合わせて実施し、当日参加できなかった従業員にも別の機会を設けて、全員が受けられるようにしました。ストレスチェックの結果はその場で本人が確認できます。結果を踏まえて、従業員同士が自発的にストレスについての意見交換をしていました。その結果、ストレスへの理解をより深め合うことになったと実感しています。当社は当時フリーアドレスを導入したこともあり、部署関係なく自由に席を選んで座り、話ができる状況になったので、そういった心理的安全性が高い職場環境も、多分良い影響を与えているんだと思います。また、集団分析の結果は、個人が特定されないようにするため、全社での分析として集計し、後日、従業員と共有しています。」
「また、高ストレスで医師による面接指導が必要と判定され、本人からの申出があった場合には、地元の地域産業保健センターにつなぐ流れができています。まだ申出は無いです。社内では、管理部の担当者(野島さん)が窓口になっています。また、医師への面接指導以外にも、社内セミナーで講師をつとめている臨床心理士にも相談できる流れもあります。」
「これまでにも、メンタルヘルス面で気になる従業員がいた際、地元の地域産業保健センターに相談し、登録産業医との面談につなげたことがあります。先日は、健康診断の有所見者に対する保健指導をセンターの登録保健師に依頼しました。また、その他、病院にかかる場合には同行することもありますし、職場復職に向けて支援したこともあります。今後も、社内だけで抱え込まず、外部の専門機関と連携しながら対応していきたいと考えています。」
研修や面談、独自の福利厚生制度を通じて、若手からベテランまで安心して働ける職場づくりを進めている
最後に、働きやすい職場環境づくりへの思いを伺った。
何事も全従業員を巻き込むようにしています 「就業規則や賃金規程、36協定など、社内ルールの決め事を整理する際は、従業員の代表の手続きに加えて、全従業員からも意見を聴いています。コロナ禍を経て、集合で集まる大切さをより実感しました。決定の場に参加することで、自分ごととして捉えるようになり、会社への帰属意識も高まっていると感じています。」
「また、年2回、私(仁木さん)を含めた取締役による、全従業員との個別面談も実施しています。面談では、仕事の状況だけでなく、仕事と家庭を含めた充実度やワーク・ライフ・バランス、福利厚生制度への意見なども確認しています。面談の前に上司が部下の良いところや期待することを事前に整理し、シートに記入してもらいます。その上で、取締役はそれに基づき記録に残しながら対話する仕組みを整えています。」
独自の福利厚生制度が、健康づくりとコミュニケーションを支えています
「当社では、独自の福利厚生制度や特別休暇を“グッドシリーズ”と称して展開しています。これが現在35種類(2026年6月時点)あります。たとえば、“グッドリレーション”は、従業員同士の社外活動を支援する制度です。ゴルフやテニス、美術館、テーマパークなど、従業員同士の交流につながる活動に対して会社が補助を行います。1回従業員3人までならば3000円/人、4人以上ならば5000円/人の補助を出しています。従業員同士で出かけると仕事以外の話もでき、リセットにもなると考えています。そうした関係性づくりも、ストレスをため込まない職場づくりにつながっていると思います。」
「健康づくりの面では、“グッドライフ制度”があります。全従業員にスマートウォッチを支給し、1日の平均歩数に応じて月ごとに集計して2000円~10000円のインセンティブを支給しています。また、年間の歩数実績に応じて表彰も行い、ランニングシューズや健康器具など、運動や健康づくりに関する購入費を補助しています。最近では従業員の声も取り入れながら、制度を改善したり新たな制度を策定したりしています。例えば、“グッドサマー制度”は、従業員からの熱中症対策の要望を踏まえて、夏場のハンディ扇風機や業務中のドリンク、アイスの費用は経費精算した上で支給しています。夏場の暑い時期に少しでも快適に仕事ができれば嬉しいです。」
若手が定着し、長く働き続けられる会社へ
「健康経営や働き方改革を進める中で、若手人材の採用にも力を入れてきました。その結果、現在では20代の従業員が多く活躍しています。建設業界では平均年齢が高い企業も多い中、当社では若い世代が育ち、職人も含めて平均年齢は30代半ばとなっています。」
「以前は従業員の入れ替わりも多かったのですが、取組みに力を入れるようになってから、離職率は大幅に下がり、従業員数は、2018年から1.5倍に増えました。健康経営やメンタルヘルス対策、福利厚生制度の費用は、単なるコストではなく、次の世代に会社をつなぎ、組織力を高めるための投資だと考えています。」
「私が就任した頃は、今のままでは次の世代にこの会社を渡せないという不安がありました。だからこそ、従業員が健康的に、長く、生き生きと、ワクワクしながら働ける会社にしていきたい。自分の子どもが将来やりたいと思えるような会社にしたい。今後も、健康経営、働き方改革、人材育成、福利厚生の充実を一体的に進めながら、若手からベテランまで安心して働き続けられる職場づくりを進めていきます。」
【取材協力】株式会社世古工務店
(2026年7月掲載)
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